大阪市にある天王寺動物園には、他の日本の動物園では見られない希少な生き物が暮らしています。中でも注目されるのがアフリカ原産の大型サル「ドリル」です。ドリルは黒い顔に白いあごヒゲが特徴で、マンドリルに似た迫力ある姿から「幻の霊長類」とも呼ばれます。この記事では天王寺動物園でしか出会えない動物たちについて、特にドリルの魅力や見どころを詳しくご紹介します。
目次
天王寺動物園にしかいない動物ドリルの魅力とは?
天王寺動物園で飼育されているドリルは、日本の動物園で唯一の個体です。その貴重さに加え、見た目や性格にも独自の魅力があります。ドリルは筋肉質な体に大きな黒い顔、そしてもじゃもじゃの白いあごヒゲを持つサルで、威厳と可愛らしさを併せ持っています。昭和から飼育されている長寿のオス「ドン」は全国的にも有名で、だんだん落ち着いた動きを見せる姿にファンも多い生き物です。ここではドリルの持つ魅力について詳しく解説します。
ドリルの特徴と魅力
ドリルは同じマンドリル属の仲間であるマンドリルよりも顔が黒く、白いヒゲが顕著なのが特徴です。体長はオスが約70~90cm、体重は30~40kgにもなり、筋骨隆々として力強い印象があります。動物園では多くの人が「イケメンドリル」と呼ぶほど、凛々しい顔立ちが人気です。子ザルの顔は生まれたときは白っぽい毛に包まれますが、成長すると黒い顔色が目立つようになります。普段は群れで木々の上や森林床を移動し、才能豊かなジャンプ力でアクロバティックに遊ぶ姿も見られ、その愛らしい動きも目を引きます。
さらにドリルの体の各部は非常に筋肉が発達しており、オスは特に逞しく見えます。尾は短く、ふっくらしたしっぽが特徴で、甘えたときや嬉しいときに振る仕草は来園者の癒しになっています。加えて、飼育員の手から直接エサを受け取るような人なつっこい一面もあり、頭が良く順応性の高さも魅力です。こうした見た目の迫力と性格のギャップが、天王寺動物園のドリルの大きな魅力になっています。
マンドリルとの違い
ドリルはマンドリル属の仲間ですが、マンドリルとはいくつかの点で異なります。最大の違いは顔の色彩です。マンドリル(Mandrillus sphinx)はオスになると顔やお尻に鮮やかな赤や青の縞模様が現れ、非常に華やかになります。一方、ドリル(Mandrillus leucophaeus)のオスは顔がほぼ真っ黒で、生え際に白いヒゲがあるだけで彩色は地味です。つまり、マンドリルほど派手な装飾はなく、黒く精悍な見た目のため「イケメンゴリラ」とも呼ばれています。
また、マンドリルの尾は長めで青や赤に彩色されるのに対し、ドリルの尾は短くて真っ黒です。体格もマンドリルの方がオスではやや大きい傾向があります。生息地も違い、マンドリルは主に中央アフリカの森林に、ドリルはさらに西のナイジェリアやカメルーンなどに分布しています。こうした違いから、天王寺動物園ではマンドリルとドリルが隣り合って展示されることもあり、比較観察できる世界でも珍しい展示としても注目されています。
日本で唯一、天王寺動物園で飼育される理由
ドリルの最大の特徴は「日本国内の動物園で飼育しているのは天王寺動物園だけ(唯一)」という点です。野生環境から保護して飼育するには高い技術と設備が必要で、多くの施設では飼育ケースが限られています。そのためドリルの飼育事例は非常に珍しく、天王寺動物園は長年にわたりドリルの受け入れ・繁殖に成功してきた実績があります。公式情報でもドリルは「日本唯一」の希少動物と明記されており、この動物園にとって重要なシンボルの一つです。
こうした希少性は、訪れる人にとって「天王寺にしかいない動物に出会える」という特別感を生み出します。実際、動物に詳しいファンや研究者の間でも天王寺動物園のドリルは注目されており、飼育員ブログや動物園公式ニュースでもその様子が度々紹介されています。天王寺ならではの「ここでしか見られない飼育種」というコンセプトは、子どもから大人まで多くの来園者を惹きつける大きな魅力です。
ドリルとは?生息地や特徴を解説
ドリル(学名:Mandrillus leucophaeus)は、マンドリル属に分類される霊長類で、西アフリカ南部の熱帯雨林に生息しています。主な生息地はナイジェリア南部、カメルーン、赤道ギニア(ビオコ島)の湿潤な森林地帯で、そこでは群れを作って生活しています。日本語名「ドリル」は英語名の直訳であり、国内では1910年代に輸入・飼育された記録があります。
野生のドリルは主に植物食で、果実やナッツ、葉、根茎などを食べます。機会があれば甲虫類やシロアリなど昆虫を食べることもあります。群れは数十頭から最大で100頭以上になることもあり、オスが複数頭、メスと子どもも混在します。オスどうしは広いテリトリーを争い、威嚇時には口を大きく開けて見せるなど攻撃的な一面も持ちますが、普段は仲間と仲良く過ごします。
ドリルはIUCNのレッドリストで絶滅危惧種(EN)に分類されており、推定数千頭以下とされています。主な脅威は森林伐採による生息地の減少と、密猟(食肉や毛皮目的)です。生息地の急速な減少に歯止めがかからず、野生個体数は減少傾向にあるため、国際的にも保護活動の対象となっています。天王寺動物園ではこうした絶滅危惧種を飼育・保護する取り組みの一環として、ドリルの飼育が評価されています。
天王寺動物園でドリルに出会える場所と飼育状況
天王寺動物園でドリルを見学できる場所は、園内の「サル・ヒヒ舎」です。てんしばゲートから歩いて右に進むと見えてくる棟で、マンドリルやニホンザルなどと並んでドリルも展示されています。展示室は少し薄暗く、ドリルたちが木の枝を登ったり屋外スペースを歩き回ったりする様子を見られます。通常は朝から夕方まで公開されており、バックヤードにいるときは屋内展示室にまとめて移動するので、見られない時間帯があっても室内に注目すると会える可能性があります。
現在、天王寺動物園で飼育されているのはオスの「ドン」とメスの二頭です。ドンは生粋のオスで、2015年には28歳の誕生日を迎えています(人間換算でかなりの高齢)。近年は体力が弱ってきて頻繁に移動しない様子も見られますが、それでも元気な声で鳴く姿は健在です。メスは比較的小柄で穏やか、二頭は一緒に暮らしており、繁殖は過去に数回成功しています。
ドリルを観察するときのポイントは、ゆっくりと静かに見守ることです。ドリルは臆病な性質のため、大声や手を叩く音に驚いてしまうことがあります。特にドンは高齢なのでストレスに敏感です。ガラスや檻越しにはなりますが、じっくり姿を見たいときは朝一番やお昼前後の比較的人が少ない時間帯がおすすめです。また、飼育員によるエサやりイベントが開催されることもあるので、その時間帯を狙うと活発なドリルの様子を見るチャンスです。
天王寺動物園でドリル以外に見られる希少な動物たち
天王寺動物園にはドリル以外にも、日本でここだけしか見られない珍しい動物がいくつかいます。これらはすべて絶滅危惧種や国内飼育例が希少な生き物で、同園の貴重な展示として知られています。以下に代表的なものをご紹介します。
キガシラコンドル
キガシラコンドルは南米が原産の大型猛禽類で、特徴的な金色の頭部が目印です。大阪府内の動物園ではここ天王寺動物園だけで飼育されており、国内では非常に珍しい展示種です。翼を広げると2m近い大きさになり、力強い飛行姿を見せます。近年は林業開発や囲い込み生息によって個体数が減少しており、動物園での繁殖・保護が重要視されています。
チュウゴクオオカミ
チュウゴクオオカミは中国東部に古くから生息するオオカミの亜種で、全身が淡い灰色がかった色をしています。野生ではほぼ絶滅状態にあると言われ、日本国内ではこの天王寺動物園でのみ飼育されています。展示されているオオカミは人に慣れない性格ですが、静かな環境で悠然と歩く姿には迫力があります。静かな場所にいることが多いため、観察の際は少し注意深く柵を見てみてください。
ヌートリア
ヌートリアは南米原産の大型げっ歯類で、ジブチヤマアラシに近い仲間です。体長は50cm以上、丸い鼻と長い尻尾が特徴的で、水辺に生息します。国内の動物園でもたまに飼育されますが、天王寺動物園では飼育環境が充実しており、池のある大きな放飼場で元気に暮らしています。家庭的なフォルムと愛らしいしぐさで人気があり、ふれあい広場で他の家畜と一緒に展示されることもあります。
キーウィ(過去の展示種)
天王寺動物園はかつてニュージーランド固有の夜行性鳥「キーウィ」の展示も行っていました。1970年の大阪万博を機に寄贈された個体群で、日本では唯一の飼育例でしたが、2024年に最後の飼育株も亡くなりました。野生のキーウィは絶滅危惧種で、日本で今後見ることはできませんが、当園の歴史ではキーウィは象徴的な存在でした。現在も園内ではキーウィの関連グッズが記念品として販売されるなど、思い出が残っています。
まとめ
天王寺動物園には、ドリルをはじめとして日本の動物園でここだけにいる希少動物が集まっています。黒い顔と白いヒゲが特徴のドリルは、マンドリルにならぶ珍しい霊長類で、接することのできる唯一の場所です。同園ではドンという老齢のオスをはじめ、貴重な動物たちが大切に飼育されています。また、キガシラコンドルやチュウゴクオオカミなども天王寺だからこそ見られる動物です。これらの動物を観察することで、絶滅の危機に直面している生き物への理解が深まり、天王寺動物園ならではの学びと感動を得ることができます。
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